![古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。主著『日本中枢の崩壊』(講談社文庫)など](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/413mw/img_2f8690fe5d5701883f0dff15927f83eb30133.jpg)
![東京高検の黒川弘務検事長 (c)朝日新聞社](https://aeradot.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/633mw/img_2db252d60059af232cf6f79d7ee6ac3548053.jpg)
ある検察官の定年延長が大きな問題になっている。
検察官は国家公務員だが、普通の公務員とは全く異なる。普通の公務員は、各大臣の指揮下で動き、人事権も政治家が握る。政治家が公務員の上に立つ仕組みだ。国民によって選ばれた政治家、そして、その政治家によって国会で選ばれた総理大臣がトップとなる内閣は、国民のために働くはずだという前提がある。
一方、公務員は、選挙がないから自己や所属省庁の利益を優先しがちになる。だから、国民のために働くはずの政治家が公務員を指揮監督するというのが、今の政治家と公務員の関係だ。
しかし、検察官はこれとは根本的に違う。時の総理や大臣も、刑事事件の捜査や訴追の対象となる。検察官は、政府の指揮命令に従うのではなく、国民に代わって、独立して正義を追求する義務がある。
それを前提にすれば、検察官の人事に政権が介入してはいけないというのが当然の原理となる。最高検察庁のトップ、すなわち検察組織のトップである検事総長は、法的には内閣が任免することになっているが、上述した理由により、実際には検事総長が自分の後任を選ぶのが慣例となっている。これも検察官独立の大原則を守るためだ。
こうした配慮は、検察官の定年にも表れる。普通の国家公務員の定年は、国家公務員法上60歳だが、公務に著しい支障が生じる場合は例外的に定年延長が認められる。
一方、検察官の定年は、検察庁法という特別の法律(特別法)により、63歳。検事総長は例外で65歳だ。定年延長の規定はない。延長を認めると、時の政権が延長を認めるかどうかで検察人事に介入する恐れがあるからだ。
ところが、さる1月31日、安倍政権は、東京高等検察庁の黒川弘務検事長(当時62歳)の定年(今年2月8日で63歳)を半年延長して8月7日とする閣議決定を行った。検察庁法に規定がないのに無理やり国公法の規定を使ったのだ。前述したとおり、これは検察の独立という観点から大問題で、違法の疑いが濃厚だ。
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