時には家や畑の周辺の草刈りがなっていないと叱られることも。

 岡本さんの場合、ブドウの栽培時期にあたる春~夏は月の半分ほど、冬は月に6、7日ほど小諸市で過ごす。生活の中心は東京にあり、定年目前の夫、2人の子どもとマンションで暮らしている。すぐ上の階には両親も住んでいる。

「老親のことを考えていると夜も眠れなくなって何もできない。介護や子どものことを理由にしていたら、何も始められません。家族が第一優先ですから、今後状況が変われば、田舎を手放すかもわかりません。それでも、とにかく今。自分の年齢と体力を考えて、今やらないとできないと踏み出しました。それに夫は定年が近いですが、ブドウ農園に定年はありません」

 小諸市にある家の2階は、ゲストルームにして民宿を開く予定でいる。

「学生時代に欧州でバックパッカーをしていたことがあったんです。さまよっていたら、『うちに泊まらないか』と、助けられました。それでいつか、日本に来た外国人や都会に疲れて農業をやってみたいというような人を迎えたいと思っていたんです。ここでつくったワインも提供したりしてね」

 岡本さんが2地域居住をするなかで見えてきたメリット・デメリットを下記にまとめた。参考にしていただきたい。いつか自分も……と思うばかりである。(本誌・岩下明日香)

■2地域居住のメリット・デメリット

メリット
・都会の生活を捨てずに、都会を離れられる
・新しい人とのつながりが増える
・風景がきれい
・以前は旅行先に悩んだが、今はまっすぐに行く場所がある
・自分の理想の空間を築ける

デメリット
・草刈りなど田舎の家の管理
・ゴミの処理
・改装費や水道を引く工事など、安い空き家には落とし穴がある
・田舎の行事への参加が不十分でうしろめたい
(岡本さんへの取材から)

週刊朝日  2020年2月14日号

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