たとえば、動物病院が嫌いな犬の場合、散歩の途中で動物病院に立ち寄る。そこで、犬にとって楽しいと思う経験を繰り返す。嫌がって院内に入れなければ、最初は駐車場でおやつを一つ与えて帰る。駐車場が大丈夫になったら今度は待合室まで入れて、そこでおやつを与える、というように徐々に慣れさせ、犬に「ここは大丈夫。楽しいところ」と記憶させることだという。

「そうやって、気軽に病院に寄れるようになると、病院側も『じゃ、体重量ろうか』『じゃ、耳を見ようか』というふうに、初期から治療にあたれます。犬にとっても治療が軽く済みますし、リラックスしていれば十分に触れられて診察も丁寧にできます。多くの方が、病気になってから連れていきますから、いつだって嫌なことしかされない場所=病院、となってしまいます」(同)

 動物病院の中には、「パピークラス」(しつけ教室)を開いているところもあり、水越さんによると、動物病院を身近にさせる絶好の機会という。近所にあれば、積極的に利用したい。

 犬は学習を重ね、記憶を積み重ねていく動物。楽しい記憶が重なっていけば、ストレスも減る。

「免疫力が下がるメカニズムは人間と一緒です。犬もストレスがかかれば病気の快復も遅くなります」(同)

 これまでに多くの犬を見てきた水越さんが感じているのは、「社交的で、あっけらかんと生きているような犬は総じて長寿傾向」。

 そのためにも、甘やかしすぎず、神経質にもならず、日々適度な運動と、正しい食事をさせる。飼い主以外の人間や犬との触れ合いに慣れさせながら、順応性を高めていくことが大切という。

 犬の健康を考える上では、歯のケアも大切だ。歯周病になると、悪化すればあごを溶かすことにもつながりかねない。

「最近よく見かけるのが、歯がきれいな歯周病の子です」

 こう話すのは、動物の歯科治療を専門とする「とだ動物病院」(東京都江東区)の戸田功院長だ。

 ペットの健康志向の高まりを受け、無麻酔の歯の掃除(デンタルケア)のサービスを提供する店も見かけるようになったが、それは歯周病の予防とは別だという。

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