昨年の12月ごろには、こんなリクエストが、遠藤会長に入ったそうだ。
「リンクにマサルちゃんを入れたい。でも、石ころなどが入るのは避けたいので、マサルちゃんの手足を洗う洗浄機が欲しいんです」
国会議員でもある遠藤会長だが、ロシアのスターから「エンドウさん、エンドウさん」と慕われていることについては、
「犬のおじさんみたいな存在ですよ(笑)」
身近な存在だけに心配で、昨年の世界選手権でザギトワが優勝したときの演技は見ていられなかった。ザギトワからは「なぜ見ないの?」と尋ねられたという。
ザギトワは、遠藤会長から「秋田犬ぬいぐるみ」や、安立屋(東京・浅草)の首輪やリードを笑顔で受け取ったり、飼育相談をしたりしている。二人のトークは、もっぱら秋田犬、そしてマサルのこと。
「日本犬のDNAだから、やっぱりお米がいいんだよ、長生きさせるにはお肉とかごちそうは控えてね」と遠藤会長が話せば「マサルも私も一緒ね」とザギトワが笑う。クールなイメージの強いザギトワだが、マサルの故郷である日本で遠藤会長と過ごす時間は、癒やしの時間。
「食事中もずっと話しています。10代の少女そのものです。フィギュアの話をしているときは普通なのに、マサルの話になると顔色が変わる。目をキラキラ輝かせています。彼女にとってはマサルは一番の相談相手、友達なんでしょうね」
おばあさんの元で暮らし、試合のときは、マサルは秋田犬保存会のロシア支部に預けられることもあったというザギトワだが、
「これからは、できる限りマサルと過ごす時間を作りたい」
報道された「引退」説も否定。マサルにも、プーチン大統領の「ゆめ」とともに、ロシアの「秋田犬」として生涯現役で活躍してほしい。
さっそくマサルは、18年11月、「エアウィーヴ」とCM出演に関する契約を締結しており、ペット用マットレス「エアウィーヴ マサルスペシャルL」の上で堂々と、CMにも出演した。
一方、カッチャンだって負けてはいない。プーチンの「ゆめ」や、元横綱の朝青龍さんの「マサオ」の育ての親でもある前出の畠山さんによって、教育を受けている様子。1月には大館市の「秋田犬の里」で展示犬としてデビューした。
ザギトワ家の子になったマサルと、ならなかったカッチャン。日ロで、大活躍の姉妹だが、いつか生まれ故郷の秋田で、ザギトワ、マサル、カッチャンの最強スリーショットが見たい。(本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2020年2月14日号