宍戸錠さん(撮影/朝日新聞出版)
宍戸錠さん(撮影/朝日新聞出版)
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前列右から4人目の宍戸さんを中心に記念撮影=2015年6月6日、提供・「元祖どっきりカメラ」同窓会
前列右から4人目の宍戸さんを中心に記念撮影=2015年6月6日、提供・「元祖どっきりカメラ」同窓会

 また一人、往年の大スターが鬼籍に入った。

【写真】伝説の「元祖どっきりカメラ」同窓会の集合写真

 1月21日、自宅で亡くなっているのが発見された宍戸錠さん(享年86)。「エースのジョー」として人気を呼び、赤木圭一郎、石原裕次郎、小林旭らと日活全盛期のスクリーンを彩り、悪役・敵役として時には主役よりも注目を浴びたものだ。

 そして映画界が低迷するや、軸足をテレビへ。ドラマだけではなく、バラエティー番組にもいち早く進出した。中でも「元祖どっきりカメラ」(1970~89年、日本テレビ系)の司会者、だまし役は今でも語り草である。

 宍戸さんの後輩・日活ニューフェース第4期生で「元祖~」では、赤いヘルメットの謝罪役だった野呂圭介さん(86)が振り返る。

「忘れられないのは、70年9月26日の放送。錠さんが白バイ警官になりすまして白昼、飲酒する、というシチュエーションでした。現場は新宿南口・甲州街道沿いにあった、角打ちができる酒屋。制服姿で現れるや升酒を飲み干して、何も知らない店主や居合わせたお客がどんな表情を見せるか……?」

 事前に決まっていたのは、ディレクターの合図で、野呂さんが番組の看板を持って現場に飛び出し、宍戸さんとともに店主にネタバラシする段取りだけ。

「錠さんが堂々と升酒をあおるもんだから、ビビった店主が110番したらしい。すぐに近くの交番から警官2人がすっ飛んできたのが見えたので、僕らは慌てて逃げたものです(笑)」

 しばしば番組のわなにかかり“カモ”にされた林家ペーさんは、真剣に司会に取り組んでいた姿を忘れられない。

「元々、大俳優ですから、台本にないアドリブやリアクションは苦手だったと思います。それでも根が真面目だからでしょうね。収録中は上着のジャケットに汗がにじむくらい緊張し、それでいて周囲にすごく気を使ってましたよ」

 酒豪で鳴らした錠さんとの酒席が思い出と語るのは、ペーさん同様に番組でよくだまされたガッツ石松さん(70)だ。

「俺はそれほど飲まないんだけど、ウマが合ったんだな。銀座のクラブ順子とかよく行ったよ。ブランデー、ウイスキー、錠さんはなんでもござれ、グイグイ飲む。でも酒で失敗した、なんて見たことがない」

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