確かに、同書によると、歌劇団自体がまず「決まり事」のオンパレードだ。
生徒(劇団員を宝塚歌劇団ではこう言う)が全員女性である宝塚歌劇の華は「男役トップスター」。そこまで上り詰めるには、10年以上かけて「出世双六」を進む必要があるが、若手だけで行う新人公演の主演→宝塚大劇場隣のバウホール公演での座長→単独でのディナーショー開催など、いくつもの関門をくぐる必要がある。
森下准教授によると、歌劇団がとりわけ大切にしているのは「長幼の序」。芸事にいくらすぐれていても、タカラヅカ的所作は数年では身につかず、一足飛びの出世は考えにくい。
「ベースには音楽学校での教育があります。2年間、外部との接触もなく、朝から晩までタカラジェンヌはこうあるべきだということを、たたき込まれる。先輩の存在は絶対で、トップスターになっても先輩には頭が上がらないものです」
いい意味で秩序を保つために、決まり事が必要になるというのだ。
一方、ファンクラブは、空前のヒットとなった74年の「ベルサイユのばら」以後に誕生したとされ、現在は全部で50近くあるとされる。元々は急増したファンからスターたちを守るための組織で、当時の名残からか、冒頭の出待ちで触れた号令をかける仕切り役は今でも「ガード長」と呼ばれている。
「歌劇団が長幼の序を大切にしていることなどに影響されているのでしょう。ファンクラブも決まり事だらけです」(森下准教授)
確かに、複数のファンクラブ関係者に聞くと、掟とでもいうべき決まり事が挙がってくる。
まずファンクラブには一つしか入れない。複数所属がばれると、除名され二度とどこにも入れなくなる。
「全身全霊を捧げてスターを応援しなくちゃいけないからでしょうね」(ディープファン)
ファンクラブに入ると、「入り待ち・出待ち」に参加する権利を得られ、その際に手紙と差し入れを渡すことができるようになる。