「入り待ち・出待ちには『会服』と呼ばれる制服の着用が義務付けられています。着るのは劇場前でスタンバイしてから。狭いスペースで待つため、雨が降っても傘はささずカッパを着るのが暗黙の決まりです」(ファンクラブの幹部)
自分や友人のために入手したチケットで空席を出さないことも絶対条件だ。都合が悪くなって行けなくなると、ファンたちの携帯ネットワークがフル稼働して代わりの人を探す。タカラヅカの公演がいつも満員なのは、こうしたことも関係しているのかもしれない。
劇場前で配布物などを受け取る際は、長幼の序が厳しいまでに守られる。
「ほかの会も配布している場合、下級生会の会員は上級生の会の前を横切ってはいけません。自分の所属会までまっすぐ進んで、そのまままっすぐに後ろに下がるイメージです」(同)
そして、ファンクラブの個々の会員にも貢献度に応じて序列がある。
「はっきり言ってお金を使った順番ですね。入り待ち・出待ちに参加した回数、観劇回数、お茶会に友達を何人連れてきたか、グッズをどれだけ購入したか……。それらをポイント制にしています」(同)
そんな掟だらけの世界をファンたちはどのように楽しんでいるのか。
「婚活」の名付け親で知られる社会学者、中央大学の山田昌弘教授は、25年来の宝塚ファン。ミュージカル好きが高じてとのことだが、ディープファンを指してこう言う。
「常連にしかわからないことがいっぱいあり、それを知るまでに長い道のりを経なければならないのが宝塚ファンの世界です。それがわかるようになるとディープな楽しみ方ができます。そして、常連になると抜けられなくなってしまう」
先の森下准教授も、
「『タカラヅカの謎』でも書きましたが、女性だけの宝塚歌劇団は世界で一つだけの存在です。カッコいい男役の虚構をファンは楽しみ、唯一無二の世界を知る喜びにひたります。そして、その喜びをほかにも広めようと、友人たちを誘うようになるのです」