競技者のレベルアップだけでなく、道具の進化でパフォーマンスが変わるスポーツ。丸山茂樹氏は、ゴルフも例外ではないという。
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みなさん、もう初詣には行かれましたか? 僕はまだ行ってないんですよね。もうかなり前から、時期をずらして行くようにしてるんです。
というのも、一説には三が日は大勢の人がやってくるから、神様も忙しいと。そうじゃないときにしっかりと「今年もよろしくお願いします」と頼んだ方が、受け入れてくれる、って。そんな話を聞いたときから時期を外して、たとえばアメリカに発つ前とか、シーズンが始まる前とか、そういうときに行くようにしてますね。
ちょっと前の話になっちゃいますけど、箱根駅伝は青山学院大学が2年ぶり5度目の総合優勝でした。親戚に青学出身の方がいるので、気になってテレビで見てました。
長距離の世界ではナイキの厚底シューズがはやりまくってるらしいですね。今回の箱根駅伝を走った選手の80%以上がこのシューズを履いてたなんてデータもあるそうで、驚きましたよ。特殊素材の間に反発力のあるカーボンプレートが挟み込まれてて、推進力がつくんだとか。
やっぱり機能性ってのは何より大事ですよね。ゴルフの世界でも昔は革底の重い靴が主流だったのが、軽いスニーカータイプじゃないと消費者は買ってくれないとかね。それに紐を結ぶのもめんどくさいんで、紐のないタイプじゃないと売れないみたいです。とくに足元を大事にしてる長距離とかマラソンの選手はもう、「足が命」じゃないですか? 僕らの道具がどうとかいうレベルじゃないでしょうね。
ゴルフで一番繊細なところというと、ボールかな。やっぱりボールが変わるとちょっと雰囲気変わるんでね。クラブは何となくなじめたりするんですけど、ボールは意外と合う、合わないがあって。気持ちは分かりますよね。ギアにこだわるのは。
ボールの進化というか変化もすごいんですよ。昔はボールを「操らないといけない」っていう時代だったんですけど、いまは直進性がすごく高いんで、いかにその直進性をボールに発揮させるスイングをつくりあげていくかが勝負ですね。だからもう、スピードがあって、フェースがまっすぐリリースできる選手が一流と言われる時代になっちゃってます。
昔はボウリングにたとえると、右の端からひねったボールを投げて、左端のピンを狙う時代だったんです。そういう技が大事だったんですけど、いまは「直球が命」です。とにかくパワーボールでまっすぐなんで、ピンを全部散らばらせるみたいな。
僕らとしては曲がる球が面白かったんですけどね。すんごい曲がるんで、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。打ってまず曲がったときにギャラリーが「おおーーー」ってなって、曲線を描いて戻ってくるときにまた「おおーー」って。反応が楽しくてしょうがなかったです。
いまは曲げようとすると失敗しやすいから、ベテランで曲げる球をイメージしてゴルフをやってた人が、すごく難しくなっちゃったんです。いまはまっすぐ立って、まっすぐ打つ。そのマシンのようなスイングが時代を背負っていく、みたいになったんです。
※週刊朝日 2020年1月24日号