

指導した北島康介選手、萩野公介選手が、計五つの五輪金メダルを獲得している平井伯昌・競泳日本代表ヘッドコーチの連載「金メダルへのコーチング」。第3回は忍耐力と克己心について語る。
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暮れの12月26日から東洋大プールで所属チームの強化合宿に入りました。元日は休んで2日の初練習を報道陣に公開したとき、今年の抱負を聞かれました。
まずはコーチとして自分自身が全力を尽くすことを話しました。一方的に練習や目標を押し付けるのではなく、一人ひとりをよく理解して選手自ら全力を出すように導いていきたい。
そして自分のチームで3個以上の金メダルを取る目標を口にしました。日本の競泳が近年獲得した五輪1大会での金メダルは2004年アテネ五輪の3個が最高です。それを自分のチームだけで上回りたい。競泳の日本代表全体では過去最多の5個(1932年ロサンゼルス五輪)を大きく上回る目標を自分のフェイスブックに書き込みました。
五輪ごとの4年サイクルの強化スケジュールの中で五輪イヤーの年末年始合宿は、量、質ともに練習の大きな山場ともいえる局面です。選手たちはそれを自覚して、厳しい練習に前向きに取り組んでいます。
昨年は不振から一時休養していた萩野公介が復調してきました。個人メドレーの400メートルで金、200メートルで銀を取ったリオ五輪前の同じ時期に比べるとまだ8割5分ぐらいの出来ですが、練習に臨む気持ちも泳ぎのほうもしっくりきはじめて、急速によくなっています。彼の目標である五輪の金メダルが、私にも見えてきたという気がします。
公開練習のときに萩野は「腰を据えて練習できている」と報道陣に話したようですが、私もそう思います。昨年は泳ぎが安定しなくて、「あっ、よくなったな」と手応えを感じても、翌週にガクッと悪くなることがありました。そういうことがなくなった。クロールの手の入水をもう少しソフトにといったアドバイスをすると、すぐに吸収して泳ぎが滑らかになっていきます。
結婚して子どもが生まれたことも大きいでしょう。いい練習を続ける仲間に助けられている面もあると思います。悪いときは練習と闘ってもがいているようなところがありました。今は自分の目標と闘っている、という感じが出ています。