ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、今年の抱負について。
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本年もどうぞよろしくお願いいたします。私にとって2020年は、プロのドラァグクイーンになって20年、星屑スキャットという3人組で歌い始めて15年、そしてタレントとして現在の芸能事務所に入って10年と、なかなかアニバーサリーな年でもあります。とは言え、これといって何か特別なことをする予定はありません。例年通り、粛々と労働に勤しみ、1円でも多くの稼ぎと納税を目指すのみです。
昨年いろいろと話題になった「桜を見る会」。なんでも今年は中止だそうですが、私は昨年と一昨年の2回ご招待賜りました。そんなことを書くと「いったいお前が何の功績や功労を残したのだ?」と憤る方たちが必ず出てきます。ごもっともです。一介の電波芸者にそんなものあるわけがない。単なる「会の賑やかし要員」としての役割を頂戴したまでだと自負しています。それが税金の無駄と言われれば致し方なしです。しかし、私が20年間「生業」として続けてきた女装稼業の根源には、常にこの「賑やかし」もしくは「彩り」という務めの上に成り立っているのも事実であり、だとすれば「桜を見る会」における私の招待理由や立ち位置は明確ではないでしょうか。「バラエティに富んだ」なんて触れ込みの下では、女装したオカマなんてもってこいの人材ですし。
新宿2丁目という街自体、世間一般から見れば非日常的な「彩り」です。私が丸の内でスナックのママをしたのも、昼のテレビ画面に出ているのも、すべては「違和感という名の彩りを添える」に尽きる。日常に飽きて、張り合いを失くし、あらゆる生産性に影響しがちな世間が存在するからこそ、私のような人間にも需要が生じる。芸能とはそういうものです。