4年後、「聖地」ウィンブルドンが舞台となったロンドン五輪では、世界5位のダビド・フェレール(スペイン)を破るなど、ベスト8まで勝ち上がった。

 16年リオデジャネイロ五輪では、3位決定戦でナダルを破り、表彰台に上がった。

 大会中、錦織の心に刺さったのが、体操男子の内村航平の個人総合金メダルと、7人制ラグビー男子準々決勝で日本がフランスを破った一戦だった。

「同じ日本人であれだけかっこいい活躍をされると自然と燃えます」

 錦織自身、準々決勝ではガエル・モンフィス(フランス)にマッチポイントを3回握られる窮地から生還した。

 19年11月末、ラグビー・ワールドカップでベスト8に進出し、日本中を沸かせた日本代表の主将、リーチ・マイケルとテレビ番組の企画で対談した。闘将から東京五輪で「金メダルを取ってほしい」と激励された錦織は、こう言った。

「以前は五輪や(国別対抗の)デビス杯は、どちらかというと、まず一番は自分のために頑張ろうと思って戦っていたんですけど、リオから変化があった。国のために戦おうと思えて、それが自分の中ですごく居心地が良かった」

 ましてや、20年夏は自国開催で満員の観客の後押しを受けるアドバンテージがある。

 酷暑が懸念されるが、自宅がある米ブラデントンは常夏の地で、蒸し暑さもある。錦織は暑さに強い。

「けがから焦らず復帰して、夏のころにはいい状態で臨めるように、体も自信もしっかりつけて臨めるようにしたい」

 30歳の夏、有明コロシアムのセンターコートで、主役を張るために。充電明けでバージョンアップした雄姿が待たれる。

週刊朝日  2020年1月17日号