



高級ホテルや旅館など国内外で40施設を運営する星野リゾート(長野県軽井沢町)。2020年は新たに沖縄やハワイなどで5施設の新規開業を予定している。
力を入れている分野が温泉だ。温泉旅館ブランドの「界」で15の温泉旅館を運営している。20年3月12日には16番目となる「星野リゾート 界 長門」が、山口県長門市にオープンする。武家文化を生かし歴史と文化に触れる施設になっているという。
20年は東京五輪・パラリンピックがあり、外国人観光客の増加も期待されている。星野リゾートの星野佳路代表に、温泉旅館への意気込みや今後の戦略などを聞いた。
--「星野リゾート 界 長門」が開業しますね。
長門湯本温泉の街全体の再生計画に基づく事業です。長門市から受託した計画では、温泉街のそぞろ歩きをコンセプトに、地域と民間と公共団体が連携して温泉街を再生させます。星野リゾートが市や他の事業者と一緒に取り組むことは今までにありませんでした。長門湯本温泉の知名度はそれほど高くありませんが、首都圏や海外からもお客さまを呼び込みたいと思っています。
温泉旅館ブランドの「界」は出雲や津軽、加賀など首都圏から遠い温泉地にも展開しています。文化や食材など、それぞれの地域らしさを反映した温泉旅館づくりに力を入れています。
宿泊施設は一般的に東京という巨大市場の近くが有利とされますが、沖縄県にある「星のや竹富島」も業績は好調です。石垣島から高速フェリーで10分かかるなど、東京から行くだけでも大変なところです。それでも、琉球文化にこだわったことでお客さまに喜んでいただいています。長門でもこうしたビジネスモデルを踏襲していきたいと考えています。
--温泉旅館はさらに増やしていく方針ですね。
温泉旅館ブランドの「界」は国内で30施設まで増やすのが目標です。平均客室数は40室前後で、そこまで施設を増やせれば運営が安定すると考えています。地震や台風などの自然災害が多い日本では全国各地に分散して客室を持つことが必要です。年間を通した需要が見込めますし、仮に一部の施設の交通や電力などが被害を受けてもお客さまが行き先を変えることができます。