3月にシドニーで練習する羽根田卓也 (c)朝日新聞社
3月にシドニーで練習する羽根田卓也 (c)朝日新聞社
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2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2020年の顔 1/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)
2020年の顔 2/2 (週刊朝日2020年1月3-10日合併号より)

 カヌーの栄冠は、これまで欧州勢が独占していた。この“常識”を覆したのが、2016年リオデジャネイロ五輪で銅メダルを取った羽根田卓也(32)だ。アジア人として初めての表彰台だった。10月に行われたNHK杯国際競技大会でも日本人トップの3位になり、東京五輪代表の座を射止めた。自国開催となる4回目の五輪では金メダル獲得の期待が寄せられる。

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 常識破りの躍進を支えているのは練習量である。練習拠点を本場のスロバキアに置き、水が冷たくなる冬にはオーストラリアで練習に明け暮れる。「練習はキツい。でもツラいと思ったことはない」という羽根田には「今日できなかったことでも、反復して練習すれば必ずできるようになる」という信念がある。

 高校卒業後、カヌー強国のスロバキアに単身で渡り、言葉も不自由な環境に挫けることなく、ひたすら腕を磨いた。この体験が「練習は裏切らない」という信念を生んだのだ。

「生半可なやさしい壁ではなかった。でも、無理だろうと思えるような壁を乗り越えた。そのスロバキアでの体験があるから、僕は、壁は必ず越えられると考えているんです」

 リオ五輪後は、東京で結果を出すためにスピードの強化に努めた。筋力強化により理想的な身体を手に入れ、水をかくパドルの長さや座る位置を変えるなど、さらなる進化を求めてベストを追求してきた。こうした努力を、羽根田は「自分の仕事」と捉えてこう言う。

「打算を考えずに仕事をまっとうする人を、僕はカッコいいと思う。自分でもそうありたい。皆さんの思いに応えるのが僕の仕事。だからひたすら練習するんです」

 本番までは練習一筋を誓う羽根田には、五輪後にやりたいことが一つある。

「五輪で結果を出せたら、日本を行脚したい。いろんな人に会って、応援してくれたことにお礼をする旅。これまで練習優先でできなかった、いろいろな体験をしたい」

(本誌・鈴木裕也)

週刊朝日  2020年1月3‐10日合併号