「寺の数が統計上微減なのは、休眠状態でも解散・廃業の届けを出していなかったり、一人の住職がいくつも掛け持ちしたりするケースが多いためだと思います。本堂などの建物は残っていても、住職がいない寺は地方を中心にかなりあります。住職が不在で檀家だけで支えている寺も少なくありません」

 水月さんの指摘を裏付ける調査結果がある。日本を代表する禅宗の一つ、曹洞宗が10年ごとに行っている「宗勢総合調査」だ。最新版の15年調査では、住職が兼務する「兼務寺院」は約2割、住職のいない「無住寺院」は2.3%に上った。

 曹洞宗は国内の仏教系寺院の2割近い約1万4千の寺を抱える。調査はこれまで基本的に非公開だったが、調査をもとに寺の実態を調べた『岐路に立つ仏教寺院』(法藏館)が7月に出版された。編著者の一人で鈴鹿大学の川又俊則教授は、ほかの宗派も厳しい状況にあるという。

「曹洞宗の調査ではっきりしたのは、兼務寺院と無住寺院の割合が年々増えていること。真言宗智山派や臨済宗妙心寺派など、兼務寺院の割合が3割を超えるところもあります。都市部への人口集中が続いていることを考えると、これからもこの傾向は続くでしょう」

 前出の水月さんは、地方の小さな寺ほど余裕がないという。

「檀家が減ればお布施や年会費など収入が少なくなります。一般的に檀家の数が300軒を切ると、住職専業で暮らしていくのは厳しいと言われています」

 寺は基本的にそれぞれが独立した宗教法人だ。運営には建物や墓地の維持、本山や教区に納めるためのものなど多額の費用がかかる。運営費が足りない場合には、住職が生活を切り詰め、自腹で補うこともあるという。

「寺の収入だけでやっていけない住職は、教師や役場の職員など、別の仕事をしてやり繰りしています。最近はどの職場も管理が厳しくなり、昔ほど休みを取れなくなりました。住職を続けるためには早期退職するしかないという人もいます」(水月さん)

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