曹洞宗の調査では、収入が500万円以下の「低収入寺院」の割合が55%を占めた。これは全国平均で、過疎地ではより割合が高くなっている。
低収入寺院では、住職の仕事だけで暮らしていくのは難しいとされる。複数の寺を掛け持ちすれば檀家が増えるという見方もあるが、掛け持ち先はもともと檀家が少なく維持費がかさむケースが多い。
手入れが行き届かず、建物が傷んだまま放置されているところもある。徳島県阿南市では15年に、無人となっていた寺の本堂が倒壊した。
「掛け持ちすることで当面はしのげても、根本的な解決策にはなりません。いずれ住職が高齢になり、不在になることも想定しなければならない。寺ごとの自主性だけに任せていては、状況は難しくなるばかりでしょう」(鈴鹿大の川又教授)
各宗派は危機感を強める。浄土真宗本願寺派は14年、財産処分の流れなどをまとめた「寺院解散の手引き」を作った。住職が死んだり高齢になったりして管理できなくなった寺の対応法を示している。建物の荒廃・倒壊や、宗教法人の悪用などを防ぐ狙いだ。過疎地には宗派から支援員を派遣し、相談に応える体制も整えている。
臨済宗妙心寺派や天台宗など、兼務寺院や無住寺院への対応策として、解散を働きかける宗派も出てきた。「いずれは宗派を超えた住職の掛け持ちや合併なども考える必要が出てくるでしょう」(寺院関係者)といった声もある。(本誌・池田正史)
※週刊朝日 2019年12月27日号より抜粋