国が病院を減らそうとしている。統廃合の議論が必要だとする424の公立・公的病院の実名を初めて公表した。診療実績が乏しかったり、近くの病院で代替可能だったりするというのが国の言い分だ。医療費削減のためだが、過疎地の医療が切り捨てられるとの反発もある。“命の最後の砦(とりで)”が消されるとき、私たちはどうしたらいいのか。
「地元の病院が必要ないと突然言われたようなものだ。納得できない」
厚生労働省は9月26日、統廃合の議論が必要だとする424病院のリストを初公表した。そこに含まれていたある公立病院の幹部はこう憤る。
全国知事会、全国市長会、全国町村会の3団体は連名で、「極めて遺憾」と厚労省を非難する声明を出した。
「地域の事情を踏まえず、全国一律の基準による分析のみで病院名を公表したことは、国民の命と健康を守る最後の砦である自治体病院が機械的に再編統合されることにつながりかねない」
自治体側がこのように反発する「全国一律の基準による分析」とはなにか。
厚労省によると、自治体が運営する公立病院と、日本赤十字社や社会福祉法人恩賜(おんし)財団済生会、独立行政法人国立病院機構などが運営する公的病院計1652施設のうち、2017年度の診療データが集まった1455病院を分析した。
基準となったのは、民間との役割分担も踏まえて公立・公的病院が担うべき診療分野や機能9項目。
(1)がん(2)心疾患(3)脳卒中(4)救急(5)小児(6)周産期(出産前後の期間の医療)(7)災害医療(8)へき地医療(9)研修・医師派遣
この項目について、それぞれの地域(医療圏)で手術や診療の実績が少ない順に下位から3分の1に含まれると、「診療実績が特に少ない」と評価する。
また、それぞれの地域で(1)~(6)の6項目の役割を果たせる病院が、車で20分以内にあるかどうかを検討。調査対象よりも実績が高い病院があったり、機能を代替できる病院があったりする場合に、「類似かつ近接」と評価した。
厚労省は、「診療実績が特に少ない」「類似かつ近接」のどちらかが当てはまると、再編統合の議論が必要だとしている。