細分化されるプロ野球選手の査定。西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、その評価軸について持論を語る。
【写真】プレミア12の2次ラウンド・豪州戦で三盗を決める周東
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野球はすべての公式の試合行事が終わり、さらに秋季キャンプも各球団で打ち上げた。これからは契約更改交渉がクローズアップされる時期になった。
その契約更改。難しいのは、査定対象となる数値をどう年俸に落とし込むかだろう。私の現役時代は査定といえば、勝利、防御率、イニング数くらい。勝率なんてない。だから、1勝の重みが違った。クオリティー・スタート(QS=先発で6回以上自責点3以下)なんて言葉もあるわけがない。先発で7回を投げきっても、リリーフが逆転されれば、何十万の給料が飛んだ。1986年シーズンの後、翌87年の年俸で1億円となった。先にロッテから中日に移籍した落合博満が球界初の日本人1億円プレーヤーとなっていた。だけど、私にも意地がある。その年、広島との日本シリーズで史上初の第8戦までもつれ込んで日本一になった。下交渉では9500万円だったが、契約更改交渉の席上で「500万円を自分で払うから1億円にしてくれ」と懇願し、1億円となった。そんな心情的な訴えも実っていた時代とは違う。
ただ、査定が細分化されればされるほど、考えなければいけないのが、1プレーに対する重みの違いだろう。起用法も今や千差万別で、救援投手で1試合を細かくつなぐ「ブルペンデー」や、救援投手が先発して初回を抑え、本来の先発投手につなぐ「オープナー」なども出現し、同じ1イニングでも価値は異なる。さらに、侍ジャパンが世界一となったプレミア12でもクローズアップされた周東のような一つの盗塁に対する価値。単なる試合序盤の盗塁と、試合終盤の盗塁では「一つの成功」の重みはまったく違う。そこをどう評価してあげるか。
野手だって、そうだ。今は「攻撃的2番」が増えている。例えば無死一塁で、バントのサインで成功した選手と、チャンス拡大のために打ちにいった選手がいるとする。打って出た選手の進塁打の数が少ないといって、バントを年間20個成功させた選手が上に行くのはおかしい。そこのバランスをどう取るか。相当難しい作業と言わざるを得ない。