──新作は昨年、住んでいたポルトガルの文化に触発されたそうですね。ポルトガルの音楽はあなたにとって重要ですか?
「とても重要だわ。もしポルトガルの音楽シーンと出会わなかったら、このアルバムは生まれていなかったわ。ポルトガルこそ『マダムX』の誕生の地よ。音楽的な意味において」
──ポルトガル語やスペイン語で歌っていますね。音楽は言語や国境を超えるべきだと信じてますか?
「ポルトガルの音楽に影響を受けながら、ポルトガル語を習得して歌わないのは失礼だと感じたからポルトガル語で歌ったの。ポルトガルの音楽に敬意を表す意味で。スペイン語も同様よ。どちらも歌うには美しい言語だと思う」
──もはや英語はポップ・ミュージックの公用語でなくなったと感じますか?
「確かにそう思う。素晴らしい状況だと思う。ポップ・ミュージックがよりワールド・ミュージックになってきたのだから。区分主義というのが私は大嫌い。人を差別したくないし、同様に音楽も差別したくない。だからいろんな言語が飛び交う音楽状況を愛している。ニューヨークにいればスペイン語の歌が流れてくるし、リスボンで車を運転しながら私が聴く音楽は世界中の音楽だわ。サンバ、レゲトン、ダンスホールなど」
──息子のデヴィッドさんがサッカー・プロになるための学校に入ったのでリスボンに引っ越されたそうですが、リスボンの生活はいかがですか?
「去年はずっとリスボンに住んでいた。これまでとは全然違う生活だった。リスボンは生活のペースがとてもゆっくりで、人はニューヨークみたいに、せかせかしていないの。ニューヨークは生活のスピードが速くて、とてもエレクトリックな都市であるのに対し、リスボンでは、人は何をするにも時間をかける。また好きなことには非常に情熱的だわ。アメリカ人が知らないような人生の楽しみ方を知っている。そんな環境で苦労したこともあったし同時に触発されたこともあった」
──新作では若い世代のミュージシャンと多くコラボしていますが、どうやってコラボ相手を発掘するのですか?
「インスタグラムでコンタクトするのよ(笑)。というのは冗談だけれど。全員が知り合いで友達なのよ。今回のアルバムで共演共作している人たちはほとんど、友達の友達という形で紹介してもらって、つながっている。会って意気投合し一緒にやろう、ということになった。とても自然な形で実現したの」