高齢者の貯蓄・運用法では、これまではリスクのある投資を控えて、貯蓄を優先するのが基本だった。だが、今は定期預金に入れても金利はほぼゼロ。深野さんは、投資などで資産寿命を延ばすことを促す。

「金融庁の報告書を参考に、老後資金として2千万円の蓄えがあり、毎月の赤字を埋めるため5万円ずつ取り崩す世帯を想定しましょう。何もしなければ資産は年60万円ずつ減っていきます。資産の4分の1にあたる500万円を投資に回し、年4%の運用益を上げられれば、年20万円の収益が得られます。その分、資産が減るペースが落ちて資産寿命を延ばすことができます。元本割れの危険性もありますが、長期間投資することで、リスクは減らせます」

 投資で有効なのが、運用益が非課税になる「つみたてNISA(ニーサ)」(少額投資非課税制度)。利用できる年齢の上限がなく、高齢者でも利用できる。対象となる投資信託は複数あるが、深野さんは「海外株式型」がお薦めだという。

「日本経済はこれから高い成長は見込めません。だからといって新興国に投資するのもリスクがある。先進国の株価指数に連動するタイプなどがよいでしょう」

 自分で運用先を決める個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」も、高齢者向けに広がりそうだ。原則59歳までしか加入できなかったが、政府は64歳までの引き上げを検討している。イデコは掛け金を全額所得税から控除でき、運用益も非課税になるなど節税効果が大きい。

 ただし、高齢者の投資は、リスクを抑えることが大原則だ。若いときは「ハイリスク・ハイリターン」で失敗しても、またやり直せるが、高齢者は後がない。金持ちになろうとして、ハイリスクな金融商品を買うと、それこそ貧乏老後が待っている。焦らずコツコツ運用していくべきだ。

「若いころから株式投資をしてきた人も、老後は『攻め』より『守り』の姿勢を重視します。値上がり益より、配当や利回りを優先するとよいでしょう」(深野さん)

 今回わかったように、老後の暮らしはますますシビアになる。消費税が上がり負担が増した今こそ、対策に取り組み始めよう。(本誌・池田正史、浅井秀樹)

週刊朝日  2019年11月22日号より抜粋

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