押しつけがましくない言葉もうなずけた。
そんな中でふと気付いたときめき。何の前ぶれもなくやってきた。まだまだ捨てたもんじゃない。冬の名残りの薔薇は、朽ちていく中だけに、いっそう美しい。
いまこの庭に
薔薇の花一輪
くれなゐふかく咲かんとす
彼方(あちら)には
昨日の色のさみしき海
また此方(こちら)には
枯枝の高きにいこふ冬の鳥
こはここに何を夢みる薔薇の花
いまこの庭に
薔薇の花一輪
くれなゐふかく咲かんとす
高校生の時、耳から憶えた三好達治の詩が浮かんできた。あの頃の純粋な想いに顔赤らめる。
私の中のときめきをこっそり育てながら、ときめきを食べて生きてゆきたい。
※週刊朝日 2019年11月8日号