放送作家・鈴木おさむ氏の『週刊朝日』連載、『1970年代生まれの団ジュニたちへ』。今回は「Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)」について。
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80年代、90年代、名作ドラマの名シーンが浮かぶときは同時に主題歌が浮かぶ。「男女7人夏物語」といえば石井明美の「CHA-CHA-CHA」。「101回目のプロポーズ」といえばCHAGE&ASKAの「SAY YES」。「素顔のままで」といえば米米CLUBの「君がいるだけで」。「愛していると言ってくれ」はドリカムの「LOVE LOVE LOVE」。当たり前だが、どの曲もドラマのために作られたものである。
今の時代、依頼されたアーティストのなかで、ドラマのプロデューサーや監督と打ち合わせをして、脚本を読み込み、曲を作るって人、どのくらいいるのだろうか? 作った曲を作り直す人、どのくらいいるのだろうか? 申し訳ないけど、ドラマを見ていて、「この主題歌、ドラマと合ってないなー」と思ってしまうことも結構ある。いろんな大人の事情でそのアーティストになり、自分のストックの中から引っ張ってきたのかな?と思う曲もある。
先ほど挙げた名曲たちは、明らかにドラマに合わせてしっかり作られた歌であり、イントロもサビも全てがドラマにマッチしている。昔より作品にマッチしてる曲が少なくなったと感じるのは気のせいか? そんな中でも時折、映画を見に行ったときに、その曲のハマり方で、最後まで劇場を出たくないと思わせる曲もある。映画「ビリギャル」のサンボマスターの主題歌なんか素晴らしかった。
そして、今。「Official髭男dism(オフィシャルヒゲダンディズム)」である。略して、ヒゲダン、である。今、ノリにノってるバンドである。ラジオでかかっていて、いい曲だな~、と思うとヒゲダンであることが多い。
彼らの曲はドラマや番組のタイアップで使われることがとても多い。ドラマ「コンフィデンスマンJP」やその映画。そしてこの夏の名曲「宿命」は、テレビ番組「熱闘甲子園」のテーマ曲。どれも作品にめちゃくちゃハマっている。そのハマり方の見事さは、80年代、90年代のそれに似ている気がする。タイアップで作品に自分たちの曲がかかることを本気で考えて、ハメていく。だから聴いていて気持ちがいい。もちろん本人たちともスタッフともお話しさせていただいたこともないが、勝手にその姿勢に惚(ほ)れている。