へその緒がついたまま、崩壊した建物から救い出された女の赤ちゃん。母親も含め、ほかの家族は亡くなった/シリア・アレッポ(photo ロイター/アフロ)
へその緒がついたまま、崩壊した建物から救い出された女の赤ちゃん。母親も含め、ほかの家族は亡くなった/シリア・アレッポ(photo ロイター/アフロ)

阪神大震災の20倍程度

 東京工業大学の山中浩明教授(地震工学)は今回の地震の規模についてこう説明する。

「死者1万人以上の地震は、世界でも数年~10年に一度起きているが、今回の地震はそれらを上回る大規模地震で、1990年以降トルコで最大の被害を生じた地震です」

 これまで国内最大級だったのが、39年に東部エルジンジャンで発生したマグニチュード(M)7.8の地震、99年に北西部イズミットで1万7千人以上が亡くなったM7.6の地震だった。それが今回はM7.8が計測された。アラビアプレートが北方向に押すことでアナトリアプレートが押し出され、西方向にずれたという。

 揺れは6日の午前4時17分と午後1時24分に起きた。1回目は南西-北東方向に走る東アナトリア断層が動いた。2回目は大きな断層の動きに誘発されて、東西方向に走る別の断層が動いたとみられる。震源の深さは18キロ、10キロと浅かったため、地表の揺れは大きかった。山中教授はこう話す。

「トルコではプレートがぶつかり合う地震が起こるので、浅い地震がほとんどです。浅い地震はM6クラスでも大きな被害をもたらすことがあります」

 今回とメカニズムが似ている地震は日本でも起きている。95年の阪神・淡路大震災と16年の本地震で、ともに活断層がずれた。

「岩盤がずれた面積などをもとに地震の大きさ(Mw)を算出すると、阪神・淡路大震災の20倍程度に相当するエネルギーが生じたことになります」

 被害が大きくなる要因は、震源からの距離だけではなく、地盤の問題もある。山中教授は過去の地震の記録を元に、場所による揺れやすさを整理した。被害が大きかったカフラマンマラシュ県中心部やハタイ県主要都市であるアンタキヤやイスケンデルンの街中は、岩盤に比べて最大3、4倍揺れた成分もあったと推測された。

 地震のメカニズムは違うが、東日本大震災の死者のほとんどは津波が原因だ。地震による直接死は阪神大震災では約5500人だったが、熊本地震は約50人。山中教授によると、日本では建物の耐震性が上がり、被害が軽減していると考えられるという。

 一方、トルコではビルが垂直に倒壊する「パンケーキクラッシュ」という現象が起きた。例えば1階が店舗で柱の強度が低いと、1階部が崩落し、2階以上も連鎖的に崩壊することだ。

「(被害拡大は)建物の耐震性の問題も大きいのではないでしょうか。耐震性が不十分な古い建物の耐震補強が進んでいないと言われています」

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