家に帰ってガレージに車を駐(と)め、玄関のそばへ行くとマキが鳴いているのが聞こえる。足音でわたしが帰ってきたのが分かるのだろう。鍵を挿してドアを開けると、マキは玄関の梁(はり)の上にとまって待っている。
「マキくん、ただいま」
チュンチュクチュン──。マキが飛んできて肩にとまる。その懐きようは室内犬とそっくりだ。
──動物病院へ行った半月後くらいから、マキはいつもと同じように上機嫌になった。餌はよく食べるし、食卓をとことこ歩いて、好物の麺類や卵焼やブロッコリーをつまみ食いする。コーンスープやグリーンピースのスープも飲む。“ピヨコチャン”“マサコチャン”“イクヨ オイデヨ”“マキクン カシコイネ”“ゴハンタベヨカ”“ソラソウヤ”と憶えたセリフを連発し、歌もうたう。
毎年のことだが、秋になり、肌寒くなったころから、マキの寝床はわたしの頭になった。深更、わたしが布団に入るとマキが飛んできてわたしの頭にとまる。ひとしきり羽づくろいをして、静かになったと思ったら羽根に顔を埋めて眠っている。わたしの頭は巣のような髪があり、暖かいのが快適なのだろう。よく耳の中にフンをされるが、かまわない。なによりマキが元気でいることがいちばんだ。
※週刊朝日 2019年11月8日号