91年W杯から8大会連続で取材する英タイムズ紙のアラスデア・リード記者に、日本代表で印象に残った選手について聞くと、こう返ってきた。

「リーチ・マイケルのリーダーとしての資質は抜群だ。周りの選手のよさを最大限に引き出しているように見える。あのカリスマ性は特筆すべきで、私のなかでは最も印象的な選手だ」

 リード記者に限らず、リーチを高く評価する専門家は多い。英デイリー・メール紙のクリストファー・パトリック記者はこう言った。

「アイルランド戦でリーチが先発じゃないと聞いたときは、日本は敗戦を覚悟して温存したのかと思った。だが、故障者が出てリーチが前半半ばで入ると、日本はそこから勢いづいた。決して偶然ではない」

 口数は多くない。だが、身長190センチ、体重110キロの体を生かした圧倒的な強さとリーダーシップで日本代表を引っ張っているのが、フランカーであり、チーム主将のリーチだ。

「自分は言葉ではなく、プレーで引っ張るタイプ」

 その言葉に偽りはなく、激しいプレーもいとわずにどんな時もチームの先頭に立ってきた。

 15歳でNZから来日し、現在31歳。すでに人生の半分を日本で過ごしている。ラグビーには、居住年数などの一定の条件を満たせば、どの国・地域の代表としても活躍できる独特の文化がある。31人の日本代表メンバーも約半数が外国出身の選手だ。

 リーチ自身、外国出身の自分が日本代表の主将を務めることに人一倍責任感を感じている。

 7月、宮崎合宿終了時には自らの発案でチームメートとともに、「君が代」にも登場する「さざれ石」がまつられている宮崎県日向市の大御神社に足を運んだ。そこで全員で「君が代」を斉唱した。

 そうした行いが、チームの結束や団結力を高めると信じているのである。

 ONE TEAM──。日本代表は、

「ひとつのチームに」

 をテーマに躍進を遂げたが、ダイバーシティー(多様性)を体現する選手たちをまとめるのに、リーチの果たした役割は決して小さくない。

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絶対的自信の源となった過酷な「地獄の宮崎合宿」