偏差値から特色重視へ、いま大学の序列が変わりつつある。各大学が少子化で学生を取り合うなか、それぞれ改革を進めてきた。その結果、教育内容が見直されるなど、学生の選ぶ基準が偏差値から変わってきたのだ。大学の多い東京だけでなく、関西でもその変化は如実に起きている。
■佐藤優がディベートの極意を伝授 関西私大は同志社が独自路線
「具体的論点について2分で考えてみて」「それで論点尽きた? はい次」「じゃ議論まとめて話してみて」「どんな反論がくるか予測して議論する」「あと1分あげるから反論してみて」……講師が学生らを促し、ディベートがテンポよく進む。発言しない学生には厳しい言葉が飛んだ。
「他人の前で間違えて恥をかきたくないという自己防衛が強すぎる。何も言わない人は存在しないものとみなされるよ」
昨年9月、琵琶湖湖畔で濃密な合宿が開かれていた。参加者は文系理系を問わず学生24人。講師の一人は元外交官の佐藤優さんだ。日ロ外交、ゲノム編集、人工知能(AI)について教授が講義をし、質疑応答、ディベート、リポート作成を行う3泊4日のプログラム。同志社大学が開いた。
関西の私大といえば、「関関同立」(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)と4大学がひとくくりにされてきた。だが、同志社が一歩先を行く状態だという。
関西圏の現役高校生向けの予備校「研伸館」の森俊夫さんは話す。
「京大や阪大の受験者が併願で受けることも多い。関関同立の中では、同志社は頭一つ抜けています」
関西圏を中心に120校以上を展開する進学塾「第一ゼミナール」の大学受験部門担当者も同様の意見。
「もともとランクが高いイメージがあるので、成績が良い受験生しか受けない。レベルの高い争い」
さらに、「早慶」「関関同立」といった既存の尺度での格付けや枠組みには与せず、独自の道を模索しているようなのだ。同大の松岡敬学長は、次のように強調する。
「大学のブランド力、実力は、偏差値で比べるのではなく、どのような特色ある教育をやっているのかを見るように変わるべき」
そして、「卒業生が社会でどのように活躍できているのか」を重要な指標と捉える。
この考えに基づき、開かれたのが冒頭の合宿だ。内容は『新・リーダーのための教養講義』(朝日新書)に詳しい。昨年の合宿は「0期」で、本年度、本格スタート。創設者にちなんで「新島塾」と名付けられ、リーダー養成を目指している。東京一極集中の時代に、西から変化の波が押し寄せてきそうだ。