延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
延江浩(のぶえ・ひろし)/1958年、東京都生まれ。慶大卒。TFM「村上RADIO」ゼネラルプロデューサー。国文学研究資料館・文化庁共催「ないじぇる芸術共創ラボ」委員。小説現代新人賞、ABU(アジア太平洋放送連合)賞ドキュメンタリー部門グランプリ、日本放送文化大賞グランプリ、ギャラクシー大賞など受賞
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「村上JAM」での一コマ (c)朝日新聞社
「村上JAM」での一コマ (c)朝日新聞社

 TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は千葉での中継を行った村上春樹さんとレッド・ツェッペリンの知られざる“縁”について。

【写真】「村上JAM」での一コマ

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 『村上RADIO』は10月放送で9回目を迎える。夏を思わせる9月の夕暮れ、村上春樹さんはビンテージ物の花柄アロハシャツで収録に現れた。派手な出で立ちには愉しい理由があった。

「タランティーノの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でブラッド・ピットが着ていたから、刺激されて」と悪戯っぽく笑った。確かに映画の中で黄色いアロハのブラピはイカしている。「アロハは夏しか着られないからね。夏の最後に蝉が鳴くみたいだけど(笑)」

 そう言えば、この日、番組アシスタント、坂本美雨さんのワンピースも、紫とピンクの美しい蝶のようなワンピースだった。

 春樹さんは、美雨さんに今年の夏を回想した。6月に作家生活40周年のイベント「村上JAM」を開催、翌7月にドイツ・バイロイト音楽祭でワーグナーを聴き、8月末には伝説のジャズミュージシャン、スタン・ゲッツの分厚い伝記を翻訳出版、さらに9月に入ってすぐレッド・ツェッペリンにいたジョン・ポール・ジョーンズ(春樹さんの小説の大ファン)のライブに出かけて楽屋を訪れた。

 ところで、春樹さん訳の『スタン・ゲッツ 音楽を生きる』について、タモリさんが「もう一度じっくり聴かねば」と題したすごい書評を書いていて(「波」9月号)、話題になっている。タモリさんは春樹さんより歳上だが、ほぼ同時代に早稲田大学で青春を過ごしている(吉永小百合さんも同じキャンパスにいたことはよく知られる)。

「60年代後半、ジャズは勢いがあって生き生きしてたと思う。その頃にジャズを聴いていた人には連帯感があるかもしれない」と春樹さんは言う。

 そんな矢先、ジョン・ポール・ジョーンズから番組にメールが届いた。ジョン・ポールは春樹さんの長編『騎士団長殺し』の熱心な読者で、今回日本に行くからぜひ会いたいという。ツェッペリンも、60年代当時の旬のロックだ。

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