登録された店を見比べてもおかしな点がある。庶民になじみの飲食チェーンなどは大企業が運営しているため、還元が受けられないところが目立つ。一方で超高級飲食店は中小事業者のところが多く、5%の還元を受けられるところがある。牛丼を食べても還元がないのに、数万円もする高級すしを食べれば数千円分戻ってくる可能性があるのだ。これでは庶民のためというより、お金持ちに有利な制度と言われかねない。

 登録店を探すのも一苦労だ。ポスターやステッカーも配られているが、外からは見分けにくい。同じ飲食チェーンでも、還元する店としない店がある。マクドナルドでは約3割の直営店では還元は受けられない。経産省は特設サイトで調べられるとするが、検索機能が十分でなく探しにくい。店舗情報が特設サイトに誤って登録されたケースも発覚している。

 キャッシュレス決済と一口にいっても、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済などがある。1日に都内のコンビニを訪れた男性はこう嘆く。

「とりあえずPayPay(ペイペイ)を使ってみました。決済の方法はほかにもあるし、どれが一番お得なんですかね。いつ、どのようにポイント還元されるかもわからない」

 国の制度だけでもややこしいのに、各社ごとに独自の還元サービスもある。どれが一番お得なのかは、ケース・バイ・ケースとしか言いようがない。

 ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは、こうアドバイスする。

「『一番お得なのは何か』を追求しすぎると混乱しやすい。利用する決済手段は、普段から使いやすいものに絞りましょう」

 よく利用するスーパーや飲食店を思い浮かべ、そこで使える決済手段にする。還元率が高い決済手段でも、使う機会が少なければ意味がない。

 ともあれ、消費者をあれこれ悩ませるポイント還元制度。ある外食チェーン大手の担当者は政府の責任を指摘する。

「現場で起こりうる課題を想定し、店舗向けのガイドラインをつくりましたが、実際の運用では対応できないことも出てくる。わかりにくいということは、顧客の利便性を下げているということ。政府は本来の狙いを思い返してほしい」

 政府はこうした批判を受け止めるどころか、芸能人を動員したイベントを開くなど、バラマキ対策のアピールに必死だ。対策には次世代住宅ポイント制度のように、これまた複雑なものもある。ネットで調べられる人はいいかもしれないが、高齢者らにはハードルが高い。情報収集はサバイバルの基本とはいえ情報弱者にはつらい。

 ここで、知っておくと損しない情報を公開しよう。コンビニなどでまとめ買いをすると、支払額が増えるケースがあるのだ。

 税込み価格100円のコーヒーを3つ買うとしよう。一つずつ税額を計算して足し合わせる場合は計300円。それが、3つまとめて計算する場合、支払額は301円となる。たった1円かと思うかもしれないが、バラバラに買うだけで負担増を避けられる。(本誌・池田正史、浅井秀樹、亀井洋志、多田敏男)

週刊朝日  2019年10月18日号より抜粋

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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