男性たちにとって教室で笑いながら語るような軽いエロが、巨額の金が動く男のビジネスで、女性の沈黙によって成立していた性搾取であることが、女性たちの声によって見えてきている。それなのに。
ドラマで村西監督は本気で性を描く特異な人として描かれる。彼のいかがわしさ、作品の暴力性を薄めたエンタメにより、黒木香の作品も再注目され売れている。業者と監督に金は入るが黒木香には一銭も入らない。村西監督は饒舌だが、黒木香は語らない。
これが一流の俳優たちによる刺激的なエンタメであることは確かだ。特攻隊を感動アクション映画として描いた「永遠の0」のエロ版のようなものだろう。だけど今も怯え眠れぬ夜を過ごしている女性たちがいる。彼女たちの恐怖を、このようなエンタメフィクションで再度なかったことにしたくない。♯Me Tooの流れを止めることはできない。
それにしてもなぜ、日本の男たちは、気持ち悪い方向に自ら向かっていくのだろう。中年になった同級生たちが、いまだに村西の呪縛に囚われているのだとしたら、気の毒でもある。
※週刊朝日 2019年9月13日号