水害問題に詳しい名古屋大の中村晋一郎准教授は注意を促す。
「老人ホームなどの福祉施設は近年、川沿いなどの災害リスクの高い土地に立地する傾向がある。川沿いの土地はもともと田んぼで、昔から川が氾濫してきた場所であることが多い。こうした施設が被害にあうことが増えているので、注意をしたほうがいいです」
西日本では、昨年の西日本豪雨、一昨年の九州北部豪雨と、毎年のように記録的な雨量となり大きな被害が出ている。
広島市安佐北・南区では14年8月の豪雨で土砂災害が起き、70人以上が犠牲となった。中村准教授は、西日本は豪雨に伴って土砂災害が起こりやすい地域だと指摘する。
「一般的には西日本は花崗岩(かこうがん)が風化した真砂土によって山の表面が形成されており、非常にもろい。大雨が降ると土砂災害のリスクが高まります。予兆は見抜きにくく、逃げることができず被害が出てしまう」
多くの自治体では、水害リスクを可視化する「ハザードマップ」を作成している。このデータを基に、台風や豪雨などで2メートル以上の浸水被害が想定される住民の割合(浸水人口/人口)が多い自治体を、地域防災に詳しい山梨大の秦康範准教授に調べてもらった。
90%を超えた大阪市福島区、群馬県明和町は、ほぼすべての住民が被害を受ける危険性があるということだ。
東京都では荒川区、台東区、葛飾区がそれぞれ73%、69%、62%と高かった。荒川や隅田川があり、海よりも地面が低い「海抜0メートル地帯」もある水害リスクの高い地域だ。秦准教授はこう警鐘を鳴らす。
「日本の大都市は関東平野や大阪平野など平野にあります。これはかつて河川が運んだ土砂が堆積(たいせき)した場所で、標高の高くない土地が広がっている。つまり、ひとたび水があふれれば、広範囲に広がる。そういう場所に住んでいることを認識しておいたほうがいい」
(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)
※週刊朝日 2019年9月13日号より抜粋
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