こうして算出した費用の総計が、預貯金額と、年金月額に100歳までの月数をかけた総計を下回っていれば、ほぼ家族の支援なしに暮らせる施設と見ていい。
一方貯蓄額が、3千万円以下の場合はどうだろう。今は入居金0円を選んで毎月分割で払える施設も増えている。預貯金が300万円だとしても、月額費用12万円の施設であれば、入居平均年齢の84歳から100歳まで、自力で支払うことも可能となる。
だが問題は、月額費用12万円という施設が少ないこと。例えば都内の標準的なホームの月額費用は20万~30万円と、これを大きく上回る。住み慣れた都内の施設に入りたいという条件がかなわず、郊外や地方のホームを選ばざるをえなくなることも多くなる。
これまで国内外2300軒の老人ホームを覆面で見学し、格付けチェックをしている「有料老人ホーム入居支援センター」の上岡榮信理事長に話を聞いた。
実際に何度も足を運び、太鼓判を押した“三ツ星”施設のなかでもっとも月額費用が安かったのは、12万5千円の郊外型施設。このように安くても良心的な施設がある一方で、激安料金だけに飛びついてしまうと、リスクも大きくなると、警鐘を鳴らす。
「例えば『緊急ベルを鳴らしたら1回300円』など、サービスを受けるたびに細かく課金され、結局高くつくという施設もありました。また年金や生活保護費を丸々取り上げられてしまう、いわゆる貧困ビジネスに狙われる危険もありますね」(上岡さん)
老人ホームも不動産と同じで、驚くようなお値打ち施設はない。高齢者施設の事業費の多くの部分は人件費であり、安い施設は人員が少ないなど、何らかの理由があると考えていい。
一方で、「どんな施設でも選び放題」と言える預貯金額はどれほどだろうか。例えば超高級有料老人ホームと言われる都内のある施設は、入居一時金が1億4千万円で、月額費用が40万円。「2億~3億円の預貯金があれば、どこでも問題なく選択できる」(菊池さん)そうだ。
ここで再び、下記の譲れない条件チェックシートに目を移していこう。