その「譲れない条件」を見ていく前に、残念ながら入居者の希望に関わらず、施設を限定せざるをえない条件が二つある。「健康状態」と「お金」だ。
まず健康状態。「認知症」「要介護3以上」など健康状態の変化で老人ホームへの入居を考えるケースは、「おのずと探す施設が決まってきて、かえってターゲットが絞りやすいこともある」と菊池さんは話す。
例えば認知症の場合、認知症の高齢者が自立して生活する手助けをしてくれる「グループホーム」、要介護度が高い人は、要介護3~5の人が入居できる公的施設「特別養護老人ホーム」なども並行して探してみるのがいい。
また有料老人ホームやサ高住でも、要介護や認知症の入居者を受け入れる施設がある。ただし医療に強い施設や、リハビリに強い施設など、その特徴は千差万別。そうした強みの見分け方は後述するとして、もうひとつ、選べる施設を大きく限定するものが、預貯金額だ。「老後2千万円不足」問題で、一気に将来が不安になった中高年も少なくない。老人ホームに入るケースでは、どれだけの貯蓄が必要なのだろうか。
「家族の支援があるのかないのか、年金の額がいくらなのかなどによっても変わってきますが……」
と前置きし、前出の菊池さんが言う。
「入居一時金800万円、月額費用20万~30万円が、都内の標準的なホーム。そんな都内の施設を希望するなら、だいたい3千万円の預貯金があるかどうかが、目安と言われています」
入居後、必要になる費用の総計の出し方は、「入居一時金」という入居時に払う費用に、「家賃」「管理費」「食費」といった施設が提示する月額費用に退居までの月数をかけた額を加える。「あいらいふ入居相談室」などの紹介サービスでは、高齢化が進む昨今、100歳までの月数をかけて必要な資金の根拠としていることが多い。
このほか、「介護保険自己負担金」やおむつ代、医療費、薬代、小遣いなど、その他の費用(一般的には月5万円前後)も必要だ。同じように、100歳までの月数をかけて合計する。