
定年後の友人付き合いはどうあるべきなのか──。生涯現役で働く「年金兼業生活」を提唱し、全国で講演を行うシニアライフアドバイザーの松本すみ子さん(69)に話を聞いた。
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何日も会わなかったら友達じゃない、なんていうのは若いころの話。年をとれば、しばらく会わなくても本当に縁のある人というのは、ちゃんとつながっていられるものです。波長が合って、互いに相手を大切に思いやっていれば、切れることはない。シニアになれば、捨てるどころじゃない。今いる友人を大事にしてほしい。そのためにも、会社員時代の見えやプライドなんか捨てて、心を開放させて、「私はこんな人間です」と自分から見せる。趣味の話でも、自分の失敗談でも「あっはっは」と笑いをとるようなトークで相手に興味をもってもらうこと。ここから友人付き合いは始まります。人に笑ってもらってなんぼなんです(笑)。
少しぐらい煩わしくても、付き合っていれば、良い面が見えてきます。時間もたっぷりあるのですから、結論を急がず、大人になりましょう。
でも残念ながら、人は変わるものです。すごく親しかった人とも価値観が合わなくなることもあります。そういうときは、「ごめんなさい、もうあなたとはお会いすることはないけれど、今までありがとう」と(心の中で)感謝の気持ちとともに、関係を終了させましょう。
切らなくても、「ちょっとストップ」でもいいと思います。そのまま消滅かもしれないし、ご縁があれば復活するでしょう。無理しないことです。一人でもいいわ、ぐらいの気持ちでいるほうが余裕のある友人付き合いができると思います。
何よりシニアになったら「一人力」をつけることです。年をとれば、どんどん頑固にわがままになります。突っ張らず、素直になりましょう。怒らず、焦らず、慌てず、人に振り回されず。あなたが魅力的になれば、あなたにふさわしい大事な人が寄ってきますよ。そんな人を大切に、縁をつないでいくのが良いのではないでしょうか。
(聞き手 本誌・大崎百紀)
※週刊朝日 2019年8月16日‐23日合併号