さらにカトリーヌさんが指摘するのは笑いと切なさの落差だ。中盤まではピュアなラブストーリーを前面に出しつつも、女子高生みたいなLINEを送ったり、キャラ弁を作ってしまう乙女・武蔵と、優柔不断な春田にイライラしつつも、生活全般尽くしまくる男・牧の攻防戦、また、その間でオロオロするはるたんの姿に、ただ笑って見ていられる。しかし最終回の一つ手前、6話の終わりにハッとする展開が待っている。それは春田を思う牧の決断だ。

「全編見せ場と言えるくらい、エピソードでぐいぐい引っ張るドラマだと思いますが、6話は通常の3話分くらい詰め込まれている怒濤の展開。そのラストにくる牧の決断は……。あの場面の林遣都さんの演技力が凄すぎて、今まで笑って見ていた人も一気に牧にシンクロして、切ない純愛の世界に引きずりこまれたんじゃないでしょうか。6話終了後、ツイッターはまぁ大荒れでしたから(笑)」(カトリーヌさん)

 OL民は阿鼻叫喚となり、6話と最終回の放送中「#おっさんずラブ」はTwitterの世界トレンド1位に。7話が放送されるまでの期間はファンの間で「地獄の1週間」と名付けられた。それくらい牧と春田を他人事とは思えなくなった人が多かった証しだろう。

 コラムニストの河崎環さんは、「おっさんずラブ」の魅力を「誰もが現実の属性やしがらみから解き放たれ、純愛を追体験できたこと」と振り返る。河崎さん自身も、著書『オタク中年女子のすすめ』に「おっさんずラブ」の脚本家、徳尾浩司さんとの対談を熱望して収録するほど、ドラマにのめり込んだOL民だ。

「最初は脚本力というか、セリフのすばらしさ、洗練された一流のコメディーであることに感動しました。たとえば黒澤部長がはるたんを好きになった理由を語る場面で『あの時、お前が俺をシンデレラにしたんだ』と言う。このセリフだけで、大人の分別や世間体なんてどうでもいいくらい、恋の魔法にかかっているのが伝わりますよね」

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