トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が仲良くツーショットと思ったら、実務協議は北朝鮮がボイコットと朝鮮半島情勢は予断を許さない中、北朝鮮に潜入した工作員の実話を元にした韓国映画「工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」が19日、公開された。90年代、核開発の実態を探るため、北朝鮮への潜入を命じられた韓国の工作員、コードネーム「黒金星」の物語だ。週刊誌の元記者で黒金星とは23年の知己という、映画の原案者のキム・ダン氏に南北関係の闇について話を聞いた。
「(黒金星に)初めて会った時の印象は武人のような強いもの。ただ、名刺の肩書は広告会社専務で、韓国企業の広告を北朝鮮で撮影しようとしていると話し、当初は半信半疑でした」
黒金星と名付けられたのは、パク・チェソ氏。軍の情報部に所属していたが、その実績を認められ、国家安全企画部(現国家情報院)にスカウトされた。
キム氏と会った時は任務まっただ中。北京にいた北朝鮮の外貨稼ぎ担当者をターゲットに潜入の機会をうかがっていた。その隠れみのが広告会社だったのだ。
「出会った翌年の1997年2月に、北朝鮮と広告事業で合意することになったから取材しないかと言われ、私も北京に飛びました。その席にいたのが、映画では『リ・ミョンウン所長』の役名で登場する、北朝鮮の対外経済交渉を担っていたリ・チョル氏で、木訥ながら、鋭利なところも感じさせる人でした」
映画は、黒金星が靴下にマイクロカセットテープを仕込むなど工作活動も見どころの一つ。実際には、録音テープを忍ばせたのは腹巻きの中。二つ用意し、一つ目のテープが終わるころにトイレに立って二つ目を回してから、何食わぬ顔でまた席に戻ったという。
「そんな緊迫した状況下にあったリ氏とパクさんだからこそ通じるものがあったのか、自宅に部外者を招くことがないといわれる北朝鮮で、リ氏はパクさんを自宅に招くような間柄だった。日本語にも精通していた二人はパクさん、リさんと呼び合っていたそうです」