帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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帯津三敬病院 (撮影/多田敏男)
帯津三敬病院 (撮影/多田敏男)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「日銭を稼ごう」。

【写真】帯津三敬病院

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【ポイント】
(1)子どものころから、お金には執着がなかった
(2)貯金なし、だから日銭を稼ぐ
(3)稼げるまでは稼ぐ、それがナイス・エイジング

 定年になった人が夫婦で30年間生活するためには、年金とは別に2千万円が必要だという話が、話題になりましたね。うーん2千万円ですか。私はそんなお金、貯めたことがないですね。

 貯金は病院を建てるときに使ってしまいました。ここ20年、借金は大いにあっても、預金通帳は常に薄氷です。

 子どものときから、お金には執着がありませんでした。母親が商売をやっていて収入があったせいか、私がお金をねだると、嫌な顔をせずに言い値だけくれました。もらったお金はすぐ使い果たしましたが、またもらえるという気持ちがあったから安心でした。

 子どものころから、お金を貯めるということがなかったのです。いわゆる「宵越(よいご)しの銭は持たぬ」というやつですね。それが大人になっても続いています。

 さらに、がん患者さんたちと付き合うようになって、患者さんより一歩でも死に近づこう、今日が最後と思って生きようと考えるようになりました。今日のお金が工面できれば、それでいいのです。

 そこで必要になるのが、日銭を稼ぐということです。今日の晩酌に必要なお金ぐらいは稼いでおこうというわけです。

 私の場合、病院で働いてもそのお金は借金の返済で消えてしまうので、もっぱら講演をしたり、原稿を書いたりして日銭を稼いでいます。

 でも、この日銭を稼ぐというのが、とてもいいんですよね。貝原益軒は養生訓のなかで、「家業に励むことが養生の道」と働くことの大事さを説いていますが、まさにそうなのです。

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