TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。今回は「サザンの桑田佳祐、原由子夫妻に振る舞われたカレーの味」。
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サザンオールスターズ、デビュー40周年ツアーの千秋楽は濃密で華やかな海の祭りだった。ツアータイトルは「“キミは見てくれが悪いんだから、アホ丸出しでマイクを握ってろ!!”だと!? ふざけるな!!」。
6大ドームを含む全国11カ所22公演、平成から令和へ元号を跨(また)いでサザン史上最多の55万人動員となった。
♪全国めぐり 今日は千秋楽 お越しくださいまして ありがとう みんなの笑顔に逢いたくて 東京ドームに帰ってきたよ♪
『壮年JUMP』を替え歌にアレンジ、『勝手にシンドバッド』を含めて3時間半の36曲、スクリーンの歌詞を見ながら4万8千人が大合唱。画面には背番号3の長嶋茂雄や空手チョップの力道山の動画も登場し、フロントマン桑田佳祐さんが育った昭和の懐かしみもあってラストは興奮のカオスになった。
サザンデビューは1978年、僕が大学に入った年だ。一聴してデレク・アンド・ドミノスや同じくクラプトンのアルバム『461オーシャン・ブールヴァード』の質感と同じ感覚を持った。サザン以外は特になくてもかまわない。そう思うくらいの衝撃だった。
桑田さんは茅ケ崎生まれのサーファーであり、週末はラジオDJとして生放送のマイクに向かう(毎週土曜23時「桑田佳祐のやさしい夜遊び」)。スタジオにお邪魔すると、潮の香りがそこはかとなく感じられる(そう言えば村上春樹さんもサザンを聴くと言っていた。春樹さんは神戸で、桑田さんは茅ケ崎。二人は似た香りがする)。
社会の忖度(そんたく)なるものとはおよそ無縁で、彼の手による楽曲は時代を常に揺さぶってきた。
前回の紅白歌合戦、平成最後の大団円では、ユーミンとのコール&レスポンスでチュッとキスまでされて年の瀬を締めくくった桑田さん。彼は決して遠くにはいない。ラジオだと、いつもそこにいてくれる。番組後半には生歌も。ロックはもちろん、フォークもニュー・ミュージックも演歌だってギター一本で歌う。本人があまりにも気持ち良さそうなものだから、リスナーはラジオに合わせてハミングし、口笛を吹く。