僕が桑田さんの番組を担当することになったのはもう20年程前だ。原由子さんはスタッフを家族のように大切にされていた。新参者の僕にもカレーを振る舞ってくれた。散々遊んで深夜1時を過ぎていた。どこまでも優しく、まろやかな味だった。
TFMホールの公開ライブではギターを弾く桑田さんの後ろでコーラスも。人生ってこんな幸せなことが起こるのだと感激した。
花火大会はスタッフみんなで。ビートルズを夜通し歌い、朝になったら味噌汁を作ってくれ、梅雨には紫陽花を眺めた。桑田さんはいろんな花の名前を知っていた。いつだって夢見る場所を教えてくれる桑田さん。♪悪さしながら男なら 粋で優しい馬鹿でいろ♪(桑田佳祐『祭りのあと』)と諭(さと)してくれ、『わすれじのレイド・バック』を聴いて何度湘南に行ったことだろう。『C調言葉に御用心』で女の子は何度涙を流したことだろう。病気で一時休養される際はNHKニュースが報じ、復帰には日本中がお帰りなさいと沸いた。
サザンは日本人の切ないところとか、忘れてはいけないところ、嬉しいところや悲しさを全部持っていて、だから、どんなときでも僕たちはサザンを歌う。
※週刊朝日 2019年7月19日号