岸信介が米国と結んだ安保条約では、日本が他国から攻撃されたら、米国は日本を守る。ただし、米国が他国から攻撃されても、日本は特別の行動を取らないことになっていた。

 これは、冷戦とは東西冷戦であり、日本は西側の極東部分であって、冷戦時には米国はソ連からの攻撃に対して、極東部分を守る責任を持っていた。だが、冷戦が終わって、米国は極東部分を守る責任がなくなった。

 だから、米国がまともに付き合おうと思う国にならないと、見捨てられる危険性がある。彼らは、日米安保条約を片務性から双務性にすべき、つまり、米国が他国から攻撃された場合には、日本も米国を守るべきだ、というのである。

 そのことを具現化したのが、安倍内閣の集団的自衛権の行使を認めることだったわけだ。

 2016年の秋、安倍首相とそのことについて話した。安倍首相は、「米国側から、集団的自衛権の行使を認めるまでは、日米同盟が持続できないと脅されたが、認めた後は何も言わなくなった。満足しているのだ」と話した。

 この問題については国内でも違憲論が少なくないが、米国は満足しているのだという。トランプ氏は、その経緯を知らないということなのか。

週刊朝日  2019年7月12日号

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田原総一朗

田原総一朗

田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年、滋賀県生まれ。60年、早稲田大学卒業後、岩波映画製作所に入社。64年、東京12チャンネル(現テレビ東京)に開局とともに入社。77年にフリーに。テレビ朝日系『朝まで生テレビ!』『サンデープロジェクト』でテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。98年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ城戸又一賞を受賞。早稲田大学特命教授を歴任する(2017年3月まで)。 現在、「大隈塾」塾頭を務める。『朝まで生テレビ!』(テレビ朝日系)、『激論!クロスファイア』(BS朝日)の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数

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