ジャーナリストの田原総一朗氏は、日米安保条約にまつわる日米の動きについて言及する。
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6月28、29日に大阪でG20が開催され、米中首脳会談、つまりトランプ大統領と習近平国家主席の会談に注目が集まったのではないか。
この原稿を書いている段階では会談はまだ行われておらず、本誌が出る段階では会談は3日前に終わっている。
米中覇権戦争が、29日の会談で収まるはずはない。
先週も指摘したが、喧嘩別れという形にはならないのではないか。あるいは、問題はいささかも決着していないが首脳会談は続け、その間は制裁強化をしない、という形になるのではないかと見ていたが、はたしてどう出ているだろうか。
それにしても、日本に向かって飛び立つ26日に、FOXビジネステレビの電話インタビューで、トランプ氏が「もし日本が攻撃されれば、我々はどんな犠牲を払っても戦う。だが、我々が攻撃されても、日本はまったく助けず、ソニーのテレビを見ているだけだ」と語ったのは、どういうことなのか。
トランプ氏は、日米安全保障条約について、米国側に負担が偏っているとの不満を示したのだろう。
米国のブルームバーグ通信は24日に、トランプ氏が最近、周辺との私的な会話で、日米安保条約が不公平だと不満を示し、破棄する可能性について考えることがあると漏らしていたと報じた。
トランプ氏は、大統領選挙のときにも日米安保条約は不公平条約で、米国は日本を守る必要はない、と主張している。
それにしても、トランプ氏はなぜ訪日の直前に、わざわざこのようなことを言うのだろう。米中の会談を前に、日本が米国の味方になることを強制する牽制だろうか。
こうしたトランプ発言に対して、たとえば菅義偉官房長官は27日の記者会見で、「(日米間は)お互いにバランスが取れている条約だと思う」と反論した。
実は、米ソの冷戦が終わった後、岡崎久彦、北岡伸一、田中明彦など保守系の学者、外交専門家たちから、日米安保条約についての強い危機感が打ち出された。