帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
※写真はイメージです (撮影/多田敏男)
※写真はイメージです (撮影/多田敏男)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「ずっと歩けるように」。

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【ポイント】
(1)老化には歩けなくなるリスクがつきまとう
(2)老化すると転倒や骨粗鬆症で骨折しやすくなる
(3)骨を維持するための対策を立てよう

 自分自身の老化を考えたときに、避けたいことがいくつかあります。そのひとつはボケてしまうこと、もうひとつは歩けなくなることです。近くの居酒屋で一杯やろうというときに、歩いていけないのでは残念です。気ままな老後を過ごすためには、自分の足で歩けることが重要ですよね。

 ところが老化には、歩けなくなるリスクがつきまとっています。日本には寝たきり予備軍の老人があふれているのです。それを危惧した日本整形外科学会は老化により歩けなくなってしまうような状態をロコモティブシンドローム(ロコモ)と名付けて、対策に力を入れています。同学会によると、ロコモの人は予備軍を含めると4700万人にのぼるというのです。

 私の太極拳仲間のOさんは90歳を超えてもなお、かくしゃくとしています。ところが、このOさんが自宅で転倒して大腿骨の頸部骨折を起こしてしまったのです。あの太極拳の名手でも転倒するのだと驚きました。太極拳は片足立ちが多く、体のバランスが自然に鍛えられるのです。

 老齢になるとなぜ転倒しやすくなるのでしょうか。ひとつは運動調節の中枢である小脳の機能が低下するからでしょう。さらに下半身の筋力の低下も原因だと考えられます。

 もう一人、古くから懇意にしている料亭の女将さんにも災難が訪れました。ほんの一瞬、不自然な体勢をとったら腰椎の圧迫骨折を起こしたのです。女将さんはベルトで腰を固定して、いつもと同じ和服姿で仕事に励んでいます。立派なものですが大変そうです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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