この一戦を見て、西武監督時代の1999年の松坂大輔(現中日)のデビュー戦起用のことを思い出した。球団営業サイドからは4月4日の開幕第2戦、本拠地・西武ドームで投げさせてほしいとの要望があった。2カード目は東京ドーム。ぜひ本拠地デビューでという考えはわかったが、首を縦に振らず、開幕4戦目の4月7日の日本ハム戦に決めた。理由はただ一つ。白星デビューをさせるためだ。本格派向きの傾斜が急なマウンドを選んだことは今でも覚えている。
吉田は直球への自信を深めただろう。ただ、大谷翔平のように160キロを出せるようになるわけではない。そしてどんなに直球が素晴らしくても、直球だけでは抑えきれなくなる。176センチと上背のない吉田には打者の反応を感じ取れる投手になってもらいたい。どの球種をどうミックスして抑えていくか。打者とどう駆け引きを行うか。一つひとつの1軍打者との対戦で感じることだ。投球に100%正解の教科書なんて存在しない。自分の持ち球と打者の反応を見ながら勝負していく。そうすれば、変化球の引き出しが今後増えた時に一気に勝てるようになる。
次の登板は交流戦最終戦となる6月23日の中日戦での先発の可能性があるという。セ・リーグとは今後、クライマックスシリーズまで対戦がなくなるから、後先考えずに思い切ってぶつかっていける利点がある。栗山監督もそこまで考えているはずだ。他の高卒新人も負けてはいられない。同世代の刺激になるはずだ。
※週刊朝日 2019年6月28日号