「仕事やスポーツなどで他者から評価されたりすると、報酬系が働き、『もっと頑張ろう』と思うようになります。意欲や集中力、持続力などの元になっているのです。この快楽の回路が強く働きすぎると、さらに刺激を求めるようになる。その刺激を糖に求めるのが、甘いもの中毒です」(同)
同時に、体でも糖依存が起きている。私たちが食事から体を動かすエネルギーを作るルートは、糖を材料にする「解糖系」と、脂肪を材料とする「ミトコンドリア系」がある。
甘いものを食べ続けると、体は材料となる糖をエネルギーに変える「解糖系」が働くようになり、脂肪をエネルギーに変える「ミトコンドリア系」があまり働かなくなる。それは、エネルギー変換に必要な、ビタミンB群や鉄が解糖系にとられてしまうためだ。
解糖系はミトコンドリア系よりもエネルギー産生の効率が悪いため、すぐにエネルギー不足(低血糖)に陥り、糖の摂取を要求する。一方のミトコンドリア系は、エネルギーに変えるためのビタミンB群や鉄を解糖系にとられているため、脂肪を食べたいという欲求が生じにくい。だが、余った糖は脂肪に変わって体に蓄積。つまり、脂肪を摂らなくても太るという肥満の悪循環が起きているわけだ。
では、この悪循環を断ち切るにはどうしたらいいか。
「まずはビタミンB群と鉄を意識して摂る。それで脂肪をエネルギーに変えるミトコンドリア系が働き始めます。糖を摂らなくてもよくなるので、脳の快楽の回路も落ち着いてきます」(同)
宗田さんがこれまで診てきた肥満患者では、ビタミンB群と鉄を摂るだけで、糖質への依存が解消され、タンパク質や脂質を含む肉や魚類を好んで食べるようになったという。先の女性も食事が改善され、70キロ台に。妊娠に結びついた。
鉄やビタミンB群の1日の推奨量は年齢などによっても異なる。例えば、鉄では、18歳以上の男性で7~7.5ミリグラム、女性では月経がある場合は10.5ミリグラム、ない場合は6~6.5ミリグラム(日本人の食事摂取基準から)。はじめは確実に鉄を補うためにも、サプリメントを利用したほうがよいそうだ。
ビタミンB群はB1、B2、ナイアシンなど8種類。いずれも水溶性で、体で使われなかった分は尿として排出されるため、基準より少し多めに。それぞれの成分がエネルギー変換に対して異なる役割を持っているので、単独で摂るよりマルチビタミンを摂ることを宗田さんは勧めている。
「甘いもの中毒から卒業して痩せた方のなかには、その後、甘いものを摂ると、眠くなったり、体がだるくなったりかえって不調を感じるようです。それで甘いものを摂らなくなった方も少なくありません」(同)
(本誌/山内リカ)
※週刊朝日 2019年6月28日号より抜粋