ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの本誌連載「アイドルを性(さが)せ」。今回は、「繁忙男女」たちを取り上げる。
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男と女は忙しそうです。原田龍二さんの騒動が空前の盛り上がり(それを煽ったひとりですが……)を見せたかと思いきや、山里亮太さんと蒼井優さんが突然の結婚。磯野貴理子さんのところはまさかの離婚。皆さん割と私の近くにいる人たちばかりです。何なの? みんなドラマティック過ぎ! 今週はさらにもうひとり結婚の報告を受けましたし、毎日会っているはずのマネージャーに至っては、先日知らない間に子供が産まれていました。
ぶっちゃけ、男同士の世界にはここまで小まめなドラマは生まれません。小まめに引っ付いたり別れたりする人たちは多く見かけますが。とりわけ私に関して言えば、ここ10年ぐらい『人生の節目』みたいなものがほとんどありません。ともすれば今自分が人生のどの辺りを歩いているのかすら分かっていない状態です。
話は変わって、今年も『ベスト・ファーザー賞』が発表され、俳優の佐藤二朗さんが選ばれたとか。てっきり10年連続ぐらいで、つるの剛士さんが獲り続けているのかとばかり思っていました。彼は5人のお子さんを持ついわゆる『イクメン』の象徴のような人で、もちろん愛妻家であり、それでいて凄まじい好奇心とバイタリティの持ち主です。運動神経も頭の回転も良く、楽器も弾けて料理も釣りも絵も将棋も上手。見た目もとても若々しく、44歳にして堂々アイドルでもあります。こんなにも『何でもできてしまう人』を今まで私は見たことがありません。さらに彼がすごいのは、そのできてしまう『何でも』を惜しげもなく発揮し仕事や暮らしに活かしてしまうところ。
元来、男なんてひたすら不器用で機能性の低い生き物のはずですが、現代日本で求められる理想の男性像というのは、その真逆を嫌な顔ひとつせずにやれる男です。一方で、昔ながらのオス然とした無骨さも重要なスペックのひとつで、それらを両立し得ないと『夫』や『父親』として『良』とされない厳しいご時世。