宮下社長の経歴もユニークだ。2015年にタンザニア国際商業祭に納豆を出展、アフリカ進出した。納豆業界は米国、欧州、アジア市場に挑戦したが、すべて失敗したという。そこで目を付けたのがアフリカで、誰も挑戦していないところに可能性を感じた。ケニアとタンザニアへ行き、危険な貧困地域で納豆を配ってアンケートをとり、普及の可能性があるとわかった。宮下社長は「納豆業界の人は販路開拓をしていないと感じた」と話す。

 16年からKDDIの香港法人でも勤務した。日本の主な農産物輸出先で納豆の輸入規制がかかっていないのは香港と米国、韓国で、アジア圏の普及活動拠点として香港を選んだ。

「納豆を普及させるだけの仕事なら食いっぱぐれると思った。KDDI香港法人の社長に話し、もうかるならやっていいと言われて、本業と納豆普及の二足のわらじをはいた」

 たぐいまれな行動力を持った宮下社長の納豆にかける情熱が実を結ぶのか、水戸市のお店の開店は7月10日(納豆の日)だ。(本誌・浅井秀樹)

週刊朝日  2019年6月21日号