「へい らっしゃい」が入るのは、映画館「TOHOシネマズ新宿」から目と鼻の先にある地下スペース。昨年10月、ホストクラブ6店舗などを展開する「Smappa!Group」は、この空間に「意図的に多様性(ダイバーシティ)を作る」というテーマでジャンルの異なる店舗を並べようと、構想を練った。焼き鳥、焼き肉などとともにすしが候補に挙がり、議論を経てSHUNさんを大将とするすし店の開店が決まった。現在は、同グループのバー2店と肩を並べて営業している。

 親戚が下町ですし店を営んでいることもあって、小さい頃からすしが大好き。すし職人は決して“夢”ではなかったが、「もし料理の道に入るなら、すし職人になりたい」と思い描いていた。18歳でホストの世界に入ってからも、その思いは絶えなかったという。

 すしを握った経験は一切なかったが、店の立ち上げが決まってから、その親戚の店で半年間修行。2カ月間のプレオープン期間を経て、2日にグランドオープンを迎えた。現在も親戚のもとに通い、仕込みやメニューについて学んでいるという。

「修行させてほしいと頼んだ時、親戚には喜ばれました。いかに大変か、わかってはいましたが、実際にやってみてなおわかった。グループには、Wワークを受け入れてもらえて感謝しています」

 店名は、シブがき隊の大ヒット曲「スシ食いねェ!」の合いの手からとった。主役である客を輝かせ、引き立たせるホストは、合いの手と同じ存在。遊び場の少ない女性たちに合いの手、そして愛の手を差し伸べたい、という思いが込められている。

 握りは一貫300円から。営業日は不定期で、ツイッターで告知している。おおむね火曜から土曜までのいずれかで、時間帯は19~21時と0~2時。間の21~24時はホストとして働く。握り手はSHUNさん一人のため、勤務シフトもまだ試行錯誤中だ。

「後輩には、一つのロールモデルを見せられてると思う。ホストとすし屋、どちらもやりきる背中を見せていかなきゃいけない」

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目指すすし屋は