


全国屈指の歓楽街である新宿区歌舞伎町の地下に、一風変わったすし店がオープンした。店名は「へい らっしゃい」。大将はなんと、現役ホストだ。カウンター越しにやわらかな笑みを見せ、こだわりの握りで客をもてなす。
「14年間ホストをやってきて、培ってきたコミュニケーション能力、ホスピタリティーを何かに生かしたいと思ったんです」
そう話すのは、大将のSHUNさん。白い調理衣の下から、鮮やかなピンクのバラがのぞく。ホストクラブ「SMAPPA! HANS AXEL VON FERSEN」の代表だ。
「お任せで握ることもできますよ。メニューには書いてないんですが、今日から入ったイサキがおすすめです。食べられないネタはありますか?」
さすがの心配りだ。
シックな空間で、ホールスタッフも話しかけやすい。メニューも金額が明記されている。チャージ料は22時まで無料、22時以降500円。
早速、お任せでお願いしてみた。横長の黒皿で出てきた最初の一貫は、イカ。塩とスダチが添えられ、シャリを包み込むように握られている。口に入れた瞬間に爽やかなスダチが広がり、弾力のあるイカをゆっくりと味わう。塩のアクセントが効き、かむほどにこみ上げる感想はただ一言――「おいしい!」。イケメン大将が「ありがとうございます」とほほえむ。
続けて出てきたのはマコガレイ。上にエンガワを載せたスタイルは、中国・上海で食べたすしを参考にしたという。女性に人気の甘エビ、大きくて存在感のあるホタテ、万能ネギとショウガのペーストとともにさっぱりと味わえるアジなどもいただいた。
通常は軍艦巻きで出てくるウニやイクラは、海苔(のり)が気になる女性のために、シャリの上に盛った形で出し、スプーンで食べられるようにもしている。これぞ、もてなしの精神。何より、どのすしもおいしい。
「素材がいいので、それを生かしたい。食べたお客様に『おいしい!』と言ってもらえた瞬間に、楽しさを感じますね」
シャリは山形県産のササニシキを使い、甘めに作っている。「女の子が好きかな、と思って。コシヒカリはコメらしい主張が強いけど、ササニシキは主張が少なくて、スッと味わえる」と、こだわりを明かす。
「それぞれのすしの食べ方も、いずれはお客様の好みに合わせて提供できるようにしたい。まだまだ試行錯誤中です」