帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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帯津良一氏 (撮影/多田敏男)
帯津良一氏 (撮影/多田敏男)

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のタイトルは「ストレスはありがたきもの」。

*  *  *

【ポイント】
(1)ストレスは人生には付き物で悪くない
(2)問題なのはバランスを回復できないから
(3)呼吸法が一番のバランス回復の方法

「ストレスは人間の宿命である」という言葉は五木寛之さんから聞きました。さすが作家だけあって名言ですね。人生には大小さまざまなストレスが付き物で、それは決して悪いことではないのです。それに伴う多少の緊張感は、脳にも刺激を与えて認知機能を高めることに役立つはずです。

 ストレスという言葉で思い浮かぶのは、精神科医の神谷美恵子さんの文章です。

<ほんとうに生きている、という感じをもつためには、生の流れはあまりになめらかであるよりはそこに多少の抵抗感が必要であった。したがって生きるのに努力を要する時間、生きるのが苦しい時間のほうがかえって生存充実感を強めることが少なくない。ただしその際、時間は未来にむかって開かれていなくてはならない>(『生きがいについて』みすず書房)

 医師の仕事も毎日、ストレスが目白押しです。診断でも治療でも四苦八苦することがあります。外来の患者さんが多いと4、5時間、息を抜けないこともあります。でも、それが仕事の充実感につながるのでしょう。仕事が終われば晩酌が待っている(未来にむかって開かれている)と思うと、元気がわいてきます。

 医学的に考えれば、生体内にひずみが生じた状態だといえます。体外から加えられた有害因子(ストレス作因)に対して、防衛反応が起きてひずみが生じます。

 この生体に生じた困難に対し乗り出すのが、自律神経のなかでも“闘う神経”である交感神経です。この神経によって、生体は戦闘状態になり問題の解決を図ります。これが活発になるときに、気分が高揚して充実感を感じるのでしょう。

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