以後、吉井の敬愛するデヴィッド・ボウイのカバー曲「ジギー・スターダスト」(本作には未収録)に次いで発表されたボウイへのオマージュ曲で、ストリングスとシンセによる新旧のサウンドが混在する「Stars(9999 Version)」。アップ・テンポのナンバーだがこれまでになかったメロディー、サウンドによるポップな「ロザーナ」。ツアーのドキュメンタリー映画『オトトキ』の主題歌で、グループの再集結をテーマにした菊地英昭作詞、作曲の「Horizon」など、既発表の配信曲と交互に、ロサンゼルス録音による6曲の新曲が並んでいる。
LAは吉井がソロとなって以来、何枚かのアルバムを制作してきたところだが、グループにとっては初体験。同地の歴史的に著名なスタジオでの録音は、新たなグルーヴ感など新鮮な息吹をもたらしたという。
LAでの録音といえば独特の空気感を持つ抜けの良いウェストコーストのロック/ポップスを想像しがちだ。もっとも、彼らが着目したのは60年代に流行し、サイケデリックな要素も含んだ音色を特徴とするガレージ・ロックだ。今回のLA録音ではそうした要素が随所でのぞく。
シャッフルのブギ・ロックの「Love Homme」はT・レックスはじめグラム・ロックのグリッター・スタイルが下敷きで、“両性具有の天才集まれ~”といった歌詞によるグラム・ロックへのオマージュ曲だが、演奏、サウンドのアプローチは以前と異なる。
吉井と菊地英昭の共作による「Breaking The Hide」は、歌謡的なメロディー、ヘヴィ・メタルとパンクが混在した演奏、サウンドだ。菊地の“東欧”的なイメージというリクエストに応えて吉井が手掛けた歌詞は、ヴァンパイアが登場するなど怪奇的。
ロッカ・バラードの「Changes Far Away」はクイーンへのオマージュ曲で、吉井の依頼から菊地はブライアン・メイ風のギターを披露。吉井は後に号泣したという映画『ボヘミアン・ラプソディ』を見る前に書いたという。演奏、サウンドの重厚さに加え、吉井のヴォーカルの説得力、菊地のギターが光る。この曲も本作のハイライトにあげられる。