手鏡で口の内の様子を観察する女性患者。奥は歯科医師(多摩クリニック)
手鏡で口の内の様子を観察する女性患者。奥は歯科医師(多摩クリニック)
オーラルフレイルのサイン (週刊朝日2019年5月3日‐10日合併号より)
オーラルフレイルのサイン (週刊朝日2019年5月3日‐10日合併号より)
(週刊朝日2019年5月3日‐10日合併号より)
(週刊朝日2019年5月3日‐10日合併号より)

 食事中にむせる、最近、滑舌が悪くなった──。こんな症状があったら要注意。どうやら、こうした症状は全身の老化のサイン、「オーラルフレイル」(口腔[こうくう]機能低下)かもしれないのだ。“口は災いの元”だけじゃない。どんな症状に気を付け、どんな対策をとればいいのか、専門家を取材した。

【こんな症状を見逃すな!「オーラルフレイル」のサインはこちら】

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JR中央線の東小金井駅のほど近く、日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックでは、食べものや飲みものの“のみ込み”がうまくいかない人たちに向け、「食のリハビリテーション」を行っている。

 3月某日。広い診察室で歯科医師の診察を受けていたのは、60代後半の男性患者。現在、体のリハビリのため別の病院に通っており、そこの担当医から、「最近、食事をするときに少しむせているので、一度診てもらったほうがいい」と、同院を紹介してもらった。

 ここでは食べることが困難になっている原因を探るため、食べる様子を観察したり、X線や内視鏡で検査したり、体や認知機能の状態を確認したりなど、多角的に食べることに関わる事柄を評価し、食べられるようにするリハビリを行う。

 ここで身長や体重、筋肉量、脂肪量の測定などを受けた男性患者。付き添いでやってきた妻は、「口だけでなく、全身をみるんですねぇ」と感心した様子だ。

 別の診察室では、80歳の女性患者が口腔内のクリーニングと義歯の調整のために受診。自宅から1時間かけてやってきたという。

「最近は先生に言われて、毎朝、起きたときに舌を口の中でグルグル回したり、べーって舌を出したり、大きな声で“あ・い・う・え・お”って言ったりしています。そうしたら、おみそ汁を飲んでもゴホゴホとむせなくなったの」

 とうれしそうに話す。

 硬いものをかめなくなった、食べこぼす、食べものが気管に入ってむせる……。年をとると気になってくる口のトラブル。実は、こうした症状は「オーラルフレイル」、あるいは「口腔機能低下症」と呼ばれ、全身の老いのサインであることがわかってきた。

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