

「女の生」に寄り添った創作姿勢が共感を呼ぶ詩人、伊藤比呂美さん。離婚後、アメリカで3人の娘を育て上げ、28歳年上のパートナーを見送った今、熊本を拠点に活動を続けています。近年は介護や老い、死を見つめた作品を多く刊行。そんな伊藤さんに同世代の女性の生き方、これからの文学などを、作家の林真理子さんがうかがいました。
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林:伊藤さんはエッセーもお書きになってるけど、言葉のリズムとか言葉の選び方が……。
伊藤:詩人でしょ。それが足かせになっちゃってね。こだわらなきゃ、林さんみたいに広く読まれるエッセーが書けるのにと思って。
林:とんでもないです。すごく人気あるじゃないですか。
伊藤:まあ、人生にいろんなことがあるからね。ネタがなくなると、ネタを探して人生を破滅に追い込んでいくんで(笑)。
林:破滅に追い込まなくたって、人のことを書いてればいいじゃないですか。
伊藤:人のことなんておもしろくないもん。私は他人にまったく興味ないし、妄想も働かないし想像もできない。やっぱり家族とか親しい人のことじゃないと。
林:そうかあ。娘さんたちはもう独立してますよね。孫はいるの?
伊藤:いますよ。
林:かわいい?
伊藤:実を言うと、娘のほうがかわいい。だっておもしろいのよ、娘のほうが。でもそんなに興味があるわけじゃない。基本的には「勝手にやってください」みたいな感じかな。林さんは結婚がちょっと遅いんですよね。子どもを産んだのがいくつのときですか。
林:44歳のとき。娘がまだ20歳だから、家庭生活やってなきゃいけないわけ。子どもが大学を出て就職したら、好きなことやりますけどね。
伊藤:それにしても、前の時代と私たちの時代って、大きく変わってません? 私たちとその前の世代と何が違うかと言ったら、私たちは産んだり育てたりをけっこう貪欲にしてきたでしょ。前の世代は、意識してそうしない人も多いですよね。子どもを産んでない人が多いし、産んでてもそのことについて書いてないし。われわれの世代からそれがガラッと変わったなと思って。
林:確かに。下の世代になると、もっとふつうに子どもを産みますよね。